自己破産しても免除されない非免責債権って何?

自己破産をして免責許可決定を得ても、実はすべての債務が免除になるわけではありません。住民税や自動車税などの税金、国民健康保険や年金などの社会保険料、その他、保育料、未払い給料、養育費、詐欺や暴力等による損害賠償債務など、一部の債務は自己破産後も支払義務が残ります。このように免責確定後も、支払義務が残る債権のことを「非免責債権」といいます。

非免責債権って何? 免責不許可との違いは?
ねえねえ、先生ー!
自己破産をしても、税金の支払いとか、養育費や婚姻費用(※)の分担とか、一部、例外的に免除されない債務もあるって聞いたんだけど、本当なのー?!
そうだね、
免責許可決定を受けた後も、例外的に免責されない債権もあるよ。これを非免責債権という。例えば、税金や社会保険料、養育費や婚姻費用、未払い給料、一部の損害賠償債務なんかが典型だね。
なるほど。
損害賠償債務も「非免責債権」になるのか…。ってことは、慰謝料も損害賠償債務だよね? 離婚のときの慰謝料とか、浮気(不貞行為)の慰謝料とかも非免責債権になるのかなー?
いや、ココでいう損害賠償債務っていうのは、(1)故意や重過失で身体や生命に危害を加えた場合か、(2)相手に対する積極的な害意があった場合(詐欺など)のどちらかなんだ。だから、浮気の慰謝料は非免責債権にはならないよ。
※ 慰謝料の免責ついては『 自己破産すると財産分与や離婚慰謝料は免責になる?』を参考にしてね。
ふむふむ。
じゃあ、非免責債権で注意しておくべきなのは、主に、税金、保険料、養育費、あとは暴行や詐欺のような不法行為での損害賠償って感じなのね。他にも注意すべきものはあるかなー?
そうだね、もう1つ重要な点がある。
「知っていながら債権者一覧表(※)に記載しなかった債務」も非免責債権になるから注意が必要だね。うっかり過失で記載し忘れた場合も、非免責債権になってしまう。
じゃあ、もし非免責債権があった場合に、それが理由で免責不許可(※)になっちゃう可能性はあるのかなー? 例えば、債権者さんが「この人を免責不許可にしてください!」って裁判所に言った場合、それで免責不許可になったりするの?
いや、それもよく誤解されがちだけど、非免責債権があることと、免責不許可事由とは、直接の関係はないよ。非免責債権があるからといって、免責不許可になることはない。むしろ、非免責債権は、他の借金が免責されることを前提にした例外的な債権だからね。
【補足】
税金が「非免責債権」であることは有名ですが、国民年金や、認可保育園の保育料、介護保険料、下水道料金などが非免責債権であることは意外と知られていません。また、浮気による慰謝料は免責されますが、DVによる離婚慰謝料は免責されません。何が非免責債権なのかは、素人には判断が難しい場合も多いので、専門家に相談してください。

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  • 破産で免責許可が確定しても、一部免責されない債権(非免責債権)もある
  • 非免責債権で主なものは、税金、社会保険料、一部の損害賠償、養育費など
  • 知っていて債権者一覧表に記載しなかった債権も非免責債権になるので注意
  • 非免責債権があることと免責不許可は全く別の話なので混同しないように
  • 非免責債権を回収したい場合は、自己破産後に、通常訴訟を提起すればいい
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具体的な非免責債権はこれ! 非免責債権の一覧を紹介

非免責債権については、破産法253条で定められています。(外部リンク
この条文によると具体的に以下のような債権が、非免責債権になります。

非免責債権の一覧

条文 内容 具体例
破産法253条1項 租税等の請求権 滞納した住民税、自動車税、固定資産税などの税金、国民健康保険、介護保険料、国民年金、そのほか、下水道料金や保育料など、国や市役所が強制徴収できる債権(参考記事
破産法253条2項 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権 詐欺や横領、着服など。ここでいう「悪意」は、単なる故意ではなく、他人を害する積極的な意欲のことを言うため、不貞行為の慰謝料(損害賠償)は含まれない。(参考記事
破産法253条3項 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償 他人に暴力を振るって怪我をさせた場合や、重過失の運転で交通事故(人身事故)を起こした場合、等、故意や重過失で他人の身体に危害を加えた場合の損害賠償請求権
破産法253条4項 扶養の義務に係る請求権 夫婦間の婚姻費用 の分担、子供の養育費、そのほか、民法上の親族間の扶養義務による扶養請求権
破産法253条5項 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権等 従業員に対する未払いの給与等
破産法253条6項 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権 破産者名簿とは、破産の申立て時に裁判所に提出する「債権者一覧表」のこと。知りながら、うっかり(またはわざと)債権者一覧表に記載し忘れた債権は、非免責債権になる。(参考記事
破産法253条7項 罰金等の請求権 刑罰等による罰金、科料、追徴金、過料等は免責されません。
破産法253条1項
内容 租税等の請求権
具体例 滞納した住民税、自動車税、固定資産税などの税金、国民健康保険、介護保険料、国民年金、そのほか、下水道料金や保育料など、国や市役所が強制徴収できる債権(参考記事
破産法253条2項
内容 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
具体例 詐欺や横領、着服など。ここでいう「悪意」は、単なる故意ではなく、他人を害する積極的な意欲のことを言うため、不貞行為の慰謝料(損害賠償)は含まれない。(参考記事
破産法253条3項
内容 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償
具体例 他人に暴力を振るって怪我をさせた場合や、重過失の運転で交通事故(人身事故)を起こした場合、等、故意や重過失で他人の身体に危害を加えた場合の損害賠償請求権
破産法253条4項
内容 扶養の義務に係る請求権
具体例 夫婦間の婚姻費用 の分担、子供の養育費、そのほか、民法上の親族間の扶養義務による扶養請求権
破産法253条5項
内容 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権等
具体例 従業員に対する未払いの給与等
破産法253条6項
内容 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
具体例 破産者名簿とは、破産の申立て時に裁判所に提出する「債権者一覧表」のこと。知りながら、うっかり(またはわざと)債権者一覧表に記載し忘れた債権は、非免責債権になる。(参考記事
破産法253条7項
内容 罰金等の請求権
具体例 刑罰等による罰金、科料、追徴金、過料等は免責されません。

 
この中で、実際の破産手続きでもトラブルになりやすいのは、やはり、税金や社会保険料(公租公課)、損害賠償請求、養育費、債権者名簿への記載忘れ、の4つです。

非免責債権の中でも重要なもの4つ・・・(1)税金や社会保険料、(2)一部の損害賠償債務、(3)未払いの養育費や婚姻費用、(4)債権者一覧表に記載し忘れた債務

損害賠償請求権には、免責されないものもある

損害賠償請求権については、少しわかりにくいので補足します。
非免責債権になるのは、「破産者が悪意で加えた不法行為」か、「故意または重過失で加えた生命身体を害する不法行為」のどちらかです。

どちらにも該当しなければ、その損害賠償請求権は免責されます。

不法行為の損害賠償債務が非免責債権になる場合-図

【具体例】非免責債権になる損害賠償請求権

例えば、詐欺や横領でお金を騙し取った場合には、明確な悪意(相手を積極的に害する意欲)がありますので、破産法253条2項により、非免責債権となります。
自己破産の直前に、自己の財産状況を偽ってお金を借りたような場合も同じです。

一方、故意がなくても、運転の重過失で相手の身体に怪我を負わせた場合には、破産法253条3項により、非免責債権になります。

また離婚原因が、DVや暴力などの直接的な加害行為である場合は、慰謝料(損害賠償金)は非免責債権になります。

詐欺などの不法行為の損害賠償は非免責債権-イラスト

【具体例】非免責債権にならない損害賠償請求権

例えば、運転で人身事故を起こしてしまった場合でも、その程度が一般的な「過失」であれば、その損害賠償金は免責されます。非免責債権になるのは、「重大な過失」がある場合だけです。

重大な過失がある場合でも、人のケガはなく、単に車が壊れただけの物損事故であれば、損害賠償債務は免責されます。

また、離婚原因が夫の浮気(不貞行為)である場合も、その慰謝料は免責されます。
夫が他の女性と不倫する行為は、妻に対して直接に向けられた加害行為ではないからです。

この点は、平成15年7月31日に東京地方裁判所で、そのような判例が出ています。

参考記事
浮気による離婚慰謝料は、非免責債権にならないの?

 
このように、同じ交通事故による損害賠償請求や、離婚による慰謝料請求でも、その理由や原因によって、非免責債権になる場合とならない場合があります。

交通事故で人のケガがない場合や、夫の不倫で離婚した場合の損害賠償は、非免責債権にならない―図

債権者一覧表に記載し忘れた債権は免責されない

債権者一覧表 に記載しなかった債権は、わざと記載しなかった場合だけでなく、うっかり記載し忘れた場合でも非免責債権になります。

債権者一覧表への記載を忘れると、その債権者は、破産手続きに参加して異議を述べたり、配当を得るチャンスを奪われることになってしまいます。ですので、その保障のために、破産手続きに参加できなかった債権は免責されなくなってしまうのです。

そのため、弁護士等に自己破産を依頼する場合には、「伝え忘れている債務がないかどうか?」を十分に注意して思い出す必要があります。

申告を忘れると非免責債権になる可能性あり-イラスト

連帯保証債務は忘れやすいので注意すること

連帯保証人である貴方が、まだ一度も銀行(債権者)から請求を受けていないような場合、あなた自身も過去に連帯保証人になったことをすっかり忘れている、というケースがよくあります。

例えば、数年前に知人の連帯保証人になっていて、その知人がまだ一度も支払いを滞っていないようなケースです。

このような場合でも、連帯保証債務をきちんと債権者一覧表に記載しておかないと、自己破産後に知人が支払不能に陥った場合、銀行から連帯保証人として債務の履行を求められてしまう可能性があります。

破産時に連帯保証債務を忘れていて後で請求されてしまう例―イラスト

連帯保証債務や求償権の記載は、本人も忘れていることが多く、また預金通帳やクレジットカード明細等から発見できないので、担当の弁護士さんも見落としがちな債務です。
債権者一覧表に記載し忘れることがないように、必ず注意しましょう。

記載し忘れた場合でも、破産開始後すぐなら補正できる

債権者一覧表は、自己破産の申立て時に裁判所に提出するものです。

ですが、すぐに債権者の記載漏れに気付いた場合は、後からでも補正することが許されます。
一般的には、「意見申述期間」という期間までであれば、債権者漏れを補正することができます。

免責意見申述期間までなら、忘れていた
債権者の追加が間に合うことも多い。-図

参考記事
債権者一覧表の記載漏れに、手続き途中に気付いた場合

 
また最終的に、自己破産の手続きが終わった後に債権者一覧表の記載漏れに気付いた場合でも、相手が「自己破産が開始したことを知っていた」と証明できる場合には、その相手には自己破産の免責を主張することができます。

その場合は、「たしかに債権者一覧表への記載は忘れたが、相手は自己破産の開始を知っていたはずだ」ということを主張立証して、裁判で免責を争うことになります。

その他、非免責債権に関するよくある質問
自己破産前に滞納していた公共料金は非免責債権になるの?
一般的には、なりません。滞納した電気代もガス代も、免責されます。
しかし下水道料金だけは例外です。下水道料金だけは、市町村が強制徴収することが認められている債権なので、破産法上の「租税等の請求権」の中に含まれます。そのため、下水道料金だけは非免責債権になります。(参考記事
自己破産前に滞納していた介護保険料は非免責債権になるの?
なります。
介護保険料も、税金や社会保険料と同じく、市町村による強制徴収(滞納処分)が認められているため、非免責債権になります。国や市町村が、強制徴収できる債権は、すべて破産法上の「租税等の請求権」に該当するため、非免責債権になります。
自己破産前に滞納していた保育所の保育料は非免責債権になるの?
なります。
保育料も、児童福祉法により市町村の強制徴収が認められています。そのため、保育所の保育料は非免責債権になります。一方、幼稚園の保育料は、公法上の債権ではありますが、滞納処分 の規定がありません(非強制徴収公債権)ので、非免責債権にはなりません。また、認可外保育所の保育料も、行政が強制徴収する債権ではありませんので、非免責債権にはなりません。
自己破産前の未払いの医療費は非免責債権になるの?
なりません。免責されます。
破産者が直接、病院や薬局に対して負っている未払いの債務は免責の対象になります。ただし、(元)妻が、子供のために病院代や医療費を負担して、それを破産者である(元)夫に分担請求している場合には、婚姻費用や養育費の問題になりますので、非免責債権になる可能性はあります。
自己破産前に借りた奨学金は非免責債権になるの?
なりません。当然、免責されます。
ただし奨学金で、まだ毎月の支払いが開始していない場合(または奨学金の保証人になっている場合)は、債権者一覧表への記載を忘れてしまうことがあり得るので、注意が必要です。債権者一覧表への記載を忘れてしまった場合は、非免責債権になってしまい、免責されない可能性があります。

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非免責債権は、どうやって請求(回収)すればいいの?

債権者の立場で、例えば、交通事故の損害賠償請求権や、離婚の慰謝料が「非免責債権だ」と主張したい場合には、どうすればいいのでしょうか?

結論からいうと、自己破産の手続きが終わった後に請求書を送ればいいだけです。

もしその請求書で、破産者が任意で支払ってくれない場合(無視される場合)や、
「いや、それは非免責債権じゃないだろ」といって争ってくる場合は、別の裁判所で、あらためて通常訴訟を提起することになります。

まずは普通に請求をし、破産者が応じな
い場合は通常訴訟を提起するという流れ-図

非免責債権かどうかは誰が判断するの?

自己破産を管轄している裁判所(以下、破産裁判所といいます)では、各債権について1つ1つ「非免責債権かどうか?」の具体的な判断は行いません。

例えば、あなたが破産した夫の元妻だとした場合、「離婚慰謝料は非免責債権だから、免責にしないでくれ!」と破産裁判所に異議を述べても意味がありません。冒頭の先生の会話にもありましたが、「非免責債権があるかどうか?」と「免責許可・免責不許可の判断」とは、直接的に関係はないからです。

破産裁判所では、全体としてその破産者を「免責にするか?」「免責にしないか?」だけを決定します。例外として、個々の債権が「非免責債権に該当するかどうか?」の判断はしません。

そのため、「非免責債権かどうか?」の判断は、自己破産の手続きが終わった後に、あらためて裁判所に通常訴訟(支払請求訴訟)を提起するかたちで、決めることになります。

非免責債権かどうかで当事者の意見が一致しない場合は、別途、通常訴訟を提起することが必要―図

この辺りは、以下の記事で詳しく説明しています。

参考記事
非免責債権かどうかを争うなら、改めて訴訟しないとダメ

 

非免責債権と免責不許可事由は、まったく別の話

たまに、自己破産の手続きで、「非免責債権があるから、免責許可が下りないんじゃないか…」と心配される破産者の方がいます。ですが、上記のような仕組みですから、非免責債権があるからといって、それが理由で免責不許可になることはありません。

免責不許可になる可能性があるのは、唯一、「免責不許可事由があるとき」だけです。
この点をまず明確にしてください。

非免責債権があるからといって、それが理由で免責不許可になることはない-イラスト図

参考記事
自己破産の免責不許可事由って? 免責が下りないケース

 
債権者から裁判所に、「私の債権は非免責債権だから、破産者を免責不許可にしてください」とお願いすることはできませんし、それによって裁判所が破産者を丸ごと免責不許可にすることもありえません。

繰り返しますが、非免責債権があることと、免責不許可になることは、全く別の話です。
 

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